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ワイヤー型防鳥商品の特性と効果的な活用法

鳥害対策を確実なものにするには、その方法について正しく深く理解することがとても重要です。
過去のコラム『鳥害対策商品について(ワイヤー型編)』で、ワイヤー型の特長である目立ちにくさや、それが効果的に使える場面について解説しました。本コラムではワイヤー型の深い理解に向けて、長年、鳥害対策製品の開発に携わってきた私の見解を交えながら解説します。

剣山型とワイヤー型の本質的な違い

効果重視の剣山型

ワイヤー型をより理解いただくには、比較対象として剣山型について知っておくとよいでしょう。
剣山型は防鳥目的にゼロから開発されたものです。このタイプは、物理的障害物である剣山を持ち、設計次第で防鳥性能を引き上げることが可能です。ワイヤー型と比べて、効果が高いのが特徴です

美観重視のワイヤー型

ワイヤー型は剣山型とは異なり、他のさまざまな用途向けに存在したワイヤーを防鳥向けに応用したものです。良くも悪くもその影響が生じます。防鳥性能を剣山型のように引き上げようとしても、ワイヤーが主体である以上どうしても限界があります。ゼロから作られたものではないという点が、防鳥性能において剣山型に劣る理由です。

とはいえ、美観についてはワイヤー型に分があり、細いワイヤーゆえに目立たずどのような建造物にも馴染みます。このように、ワイヤー型は防鳥性能より美観を優先させたい現場で選ばれています

また、ワイヤー型は一般的には「ワイヤーを使った目立たない防鳥方法」という認識だと思いますが、防鳥製品の開発者として重要と考える視点は、「人から視認されにくいワイヤーは鳥からも視認されにくく、また、強い障害物として認識されにくい」というものです。

つまり、ワイヤーは鳥にとっても障害物として認識しにくく、それがメリットにもデメリットにもなっているという考え方です。この視点を持つことは、ワイヤーの特性を深く理解することにつながり、ワイヤー型の持つ本来のポテンシャルを引き出すことができるため、その限界も明確になります。

ワイヤー型は鳥からも見えづらい

人からその見えにくさ(美観性)で選ばれるワイヤー型ですが、上述の「鳥からもよく見えていない、または見えたとしても強い障害物として認識されていない」という私の考えについて深く考察してみます。もし鳥にワイヤーが見えていても、それが何か正しく認知できなければ、鳥たちの行動は結果として見えていないのと同じになるはずだということです

例えば、私は、空が反射して映っている窓ガラスに鳥が衝突してしまう場面に何回か遭遇したことがあります。その鳥たちは運が良くて気絶、残念ながら即死してしまうこともあります。これら衝突の場面で共通していることは、どの鳥も高速で飛び抜けようとしていた、ということです。衝突したら死んでしまうくらいのスピードで、決まって窓のど真ん中に衝突痕を残します。窓枠に当たらないように、(窓に映った)青空に向かってど真ん中を飛び抜けようとした───あたかも木々をすり抜けるように───。

防鳥製品の開発では、このような情報がたくさん集まることによりはじめて見えてくることもあります。真相は鳥に聞くしかありませんが、我々人間から見た時、そう考えることで「すべて納得できる」という状態です。

これらを踏まえて改めてワイヤーについて考察すると、「高速で飛行する鳥にはワイヤーが見えていない。それを視覚的に捉えるのは着地間近になってからではないか」というのが今の私の考えです。

ワイヤー型の防鳥メカニズムを詳しく解説

1. 鳥に与える不快感

では、そのくらいの視力・認識能力ゆえワイヤーを障害物と認識できず飛来してしまったら、どうなるか?
剣山型のような強力な障害物があるわけではないので、危険でないと判断したら着地を試みるでしょう。その際、もしかしたら見えづらいワイヤーに手こずるかもしれませんし、あるいは剣山ほどでないにしろ煩わしい場所だと感じるかもしれません。

ただ、ワイヤー型は剣山型ほど強力ではないので、着地に成功すれば飛来を繰り返す確率が高くなります。
一方で、鳥とって羽は大切ですので、着地や飛び立つときに羽が傷つくと感じればそこに執着しないでしょう。ワイヤーゆえに見えづらく(確かな障害物が)認識できないのに羽が傷つくことや、飛び立つことや着地がしにくいのは不快ですから、他の快適なところに移動するはずです。
この「鳥が飛来した時に感じる不快感」はとても重要な意味を持ち、鳥たちがその場所に飛来を繰り返すかどうかの明暗が分かれるポイントになると考えられます

2. 鳥に与える不安定感

鳥にとって羽は大切だと述べましたが、頭部と胴体も急所です。
たびたび鳥害現場になるビルやマンション、対象はハトを想定しましょう。飛来したハトの着地が成功したかどうかの見極めポイントは2つです。

1つ目は平面(斜面もあり)に着地、かつ、頭と胴体が壁面より内側に入って安定しているか。
2つ目は羽をばたつかせていないか、です。

これらが同時に成立すれば、鳥は安定してそこにいることができます。

ハトは止まり木のようにワイヤーの上に止まろうとしますが、それは不可能です。その理由は、ハトの足ではワイヤーを掴めないこと、体重が重すぎてワイヤーがたわみ安定しないからです。
そこで、次に平面に着地を試みます。平面に着地したとしても、適正に防鳥ワイヤーが張られていれば、彼らの急所である頭部と胴体をダイレクトに外側に押し出す力が働いていますので、やはり安定しません。そして、ワイヤーの力で外側に押し出されると足元が安定しないので、浮力を得るために羽をばたつかせます。こうして鳥に不快感、不安定感を与え続けるというのがワイヤーの防鳥メカニズムです。

ワイヤー型は予防に効果的!鳥害が進んでいる場合は剣山型を

ただし、既に営巣していたり、ヒナ鳥がいる場合は、帰巣本能が優位になるので話はガラッと変わります。
そこに棲み慣れた我が家があったならば、規制線が張られたくらいでは簡単には引き下がりませんし、必ず乗り越えようとします。このレベルの鳥害ステージになると、ワイヤー型の守備範囲を超えてきます。これが、「ワイヤー型は被害が出る前の予防として使うのが最も効果的」である理由です。防鳥製品は、それぞれの鳥害ステージで受け持つ製品が変わります

帰巣本能優位になっている鳥害現場では、より強力な「剣山タイプ」の出番になります。ワイヤー型とは対照的に、その存在感のある剣山をためらう方もいらっしゃると思いますが、少し考え方を変えていただければと思います。

  • 鳥たちには寿命がある
  • 他に良い場所はいくらでもある
  • 周辺環境は変わる
  • 鳥が来なくなれば剣山からワイヤーに変えればOK

これらがすべて事実だとすれば、随分と気が楽になるのではないでしょうか。そしてこれは、実際に事実です。

例えばケガの時もそうですが、骨折を正しく・早く治すために一時的にギプス固定をしたり、強めの薬を服用したりします。もちろん、できれば避けたいことですが、一生続くことはありませんし、何より確実に早く改善します。
防鳥も同じで、ワイヤー型の守備範囲を超えた状況では、無理せず、潔く、より強力な防鳥製品に任せるのがスマートな鳥害対策です。

まとめ

本記事では、これまで触れられることのなかった視点からワイヤー型について解説しました。ワイヤー型はその目立ちにくさから根強い人気があり、現代の高い意匠性を持った建築物やどのような街並みでも溶け込める実力ある防鳥方法としてそのポジションを確立しています。
しかし、ワイヤー型は簡単な構造であるがゆえに使い手次第でその明暗がくっきりと分かれる防鳥方法でもあります

弊社「ハトワイヤー」は、簡単でありながら奥が深いワイヤー型のポテンシャルを誰でも簡単に最大限引き出せるよう様々な工夫を凝らしています。業務用途で選ばれるそれらのディテールを実際の現場で感じていただきたいと思います。

ワイヤー型を深く知っていただき、ポテンシャルを最大限引き出すことに、このコラムがお役に立てれば幸いです。

この記事を書いた人

この記事を書いた人

山本 剛司

(株)コーユー代表取締役社長。1984年の創業当初から業務に携わり、鳥害に関する経験を重ねる。2008年二代目として代表取締役社長に就任。
鳥害対策市場黎明期より培ってきた業界経験と豊富な知識を基に、鳥害対策のエキスパートとしてオリジナリティある新商品の企画、開発を行う。

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